2013年2月1日金曜日

dignity

「人間の尊厳」

日本の医療は病気ばかり見て人間を診ていない。今日の実習で訪れた病院の先生が訴えていたことを一言で言うなら、そういうことだと思う。

私たちはがんを怖い病気だと思う。死にたくないから。 でも、がん告知を受けた患者さんが考えるのは、治療費のことだったり、仕事のことだったり、子供のご飯のことだったり、残される家族のこと。がんでも自分らしく生きたいし、社会に必要とされる存在でありたい。

つまり、死だけが問題なのではない。

脳疾患で倒れたり、交通事故にあったり、命は取り留めても障害が残った場合。言葉が出てこない、わからない、働けない、炊事ができない、掃除ができない、歩けない、排尿排便がコントロールできない… 自分はこれでも人間なのか、こんなことなら死にたい、そう思いながら生きなければならないとしたら。

それでも尊厳を持って人間らしく生きるにはどうすればいいのか。

リハビリの様子を見学したときに、先生は多くの患者さんが水色のストライプの「囚人服」を着させられていることを批判した。欧米では、色鮮やかな洋服でリハビリをし、スーツを着て車いすに乗っていると。

障害があると、あきらめなければならないことがたくさんある。
でも、あきらめなくてもいいこともある。人間らしく生きる方法はどんな状況下でもあるのだ。

先生が最初に私たちに言ったのは、歴史を勉強しなさい、ということだった。差別の歴史を知って、人間は決して素晴らしいものではないと知ることは重要であると。


今は何でもできる、何にでもなれる自由な時代だけれど、自由とは、長い歴史の中でようやく勝ち取られた理念、哲学で、平等、博愛などの概念も数千年かけて生み出されてきたものである。 だから、私たちはそれらを大切にして、維持しなければならない。自由なんか、明日なくなるかもしれないのだ。

なぜなら、ヒットラー自身は一人も殺さなかったのに多くの人命が奪われた。人間は上からの指示、命令に弱い。だからこそ、独立独歩の精神を持たなければならない。

universityはそもそも世界の人々に尽くすために勉強する場所である。
人間はいろんな問題に向き合うことで生き生きと生きられる。

御年71歳。背筋がしゃんとした白衣姿、チャーリーブラウン柄(?)のネクタイ、眼鏡の奥の大きな目、しっかりした滑舌が印象的な先生だった。

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